ヘルスケアや医療の分野でも開発が進められているメタバース。
いま続々と医療業界の団体や企業が参入及び導入を始めています。
今回はヘルスケアや医療の分野の中のトレーニングに焦点をあてて、実際の導入事例や開発を発表しているものをご紹介します。
いまは健康体でも新型コロナウィルスのようにいつどういう病気が流行るか分からない時代です。
だからこそ、自分には関係ないと終わらせるのではなく、まずは一緒に知るところから始めていきましょう!
製薬会社ファイザーのVRトレーニング導入
コロナワクチンを作っているアメリカの大手製薬会社のファイザー社がメタバース技術を使ったトレーニングを導入しています。
主に無菌注射剤の生産過程の作業でのトレーニングで用いられているようです。
実際の工場内の設備をすべて3Dソフトウェアでデータ化し、VRトレーニング用のバーチャル工場内をつくりそこでトレーニングをします。
無菌注射剤の生産時の作業では、汚染リスクを下げることが重要でミスが許されない作業になりますので、事前にトレーニングを積んで実践に近い形で作業できます。
事前にVRトレーニングでシミュレーションと研修を行うことでスムーズに作業を進めることができます。
これまで実践あるのみだった作業がメタバースのバーチャル工場内でトレーニングすることで、汚染リスクを下げることができるので、従業員の方も安心して働くことができます。
メタバースで認知行動療法として脳トレーニング

順天堂は2022年4月にプレスリリースで、2022年内にメタバース上で「順天堂バーチャルホスピタル」を再現し医療サービスを開始したい考えであると発表しました。
2022年から2024年にかけてビジネスモデルの構築を目指しているようです。
順天堂バーチャルホスピタルでは、入院患者が家族や友人とのコミュニケーションの場として活用したり、来院が難しい方にはオンライン診療もできるようにしたりできるよう構想しています。
また働き方改革の一環で病院での事務仕事をメタバース上で出来るように取り組む予定です。
その他にも、現実世界とメタバースを往来することが治療に役立つ可能性があると研究がすすめられています。
認知行動療法としてメタバースで脳トレーニングを行うことで、認知症のためのトレーニングや生活習慣病、歩行障害に関するトレーニング、リハビリにも応用できるのではないかと言われています。
手術のシミュレーション
Holoeyes 社は日本の企業で、2020年2月に手術前のシミュレーションができるソフトウェア「Holoeyes MD」を開発し、管理医療機器(クラスⅡ)の認証を受けました。
医療機器は人体に与えるリスクによって3つに分類分けされています。
管理医療機器(クラスⅡ)とは、リスクが比較的少ないものに該当し、他に血圧計や補聴器なども同じ分類です。
リスクが高い高度管理医療機器(クラスⅢ /クラスⅣ)には、コンタクトレンズや輸液ポンプがあり、リスクが極めて低い一般医療機器(クラスⅠ)は、絆創膏や医療用ピンセットなどがあります。
Holoeyes MDは、実際の体を使わなくても手術のシミュレーションができるので、医師の技術向上や学生や医師など医療現場での教育の場面で使うことができます。
すでに東京都の支援で都立病院での使用実績があり、海外への販売も拡大していく予定のようです。
VRを使った歯医者の研修トレーニング

2022年6月に歯医者の研修トレーニングの実証実験が行われ、メタバース上に講師と歯科医師、歯科衛生士がVRゴーグルを装着し、4拠点から集まりました。
患者の口内をスキャンして3Dデータをメタバース上で表示し、講師から難易度が高い最先端の治療法の解説やトレーニングの説明を受けました。
電話で声の説明だけだと伝わりづらく、テレビ電話だと2Dのため細かく説明したい場合に伝わりづらい側面があります。
この2つの伝わりづらさを解消するのがメタバースです。
メタバースに3Dデータとして再現することで、模型をコントローラーで操作し向きを変えて見やすくすることで分かりやすく伝えることができるでしょう。
例えば口内の歯の神経について説明したいときに、歯の骨の部分をスケルトンにし神経に焦点があたるように神経部分の濃度を濃くしてあげるなど、分かりやすく解説するようなこともできるようになります。
メタバース上でトレーニングすることができれば、歯科医師や歯科衛生士の技術向上にも役立つことでしょう。
フィットネストレーニング
フィットネス分野でもメタバースの開発が進められています。
アメリカのフィットネスジム「Black Box VR」では、会員はVRゴーグルを使用し、VRゲームを楽しみながらトレーニングをすることができます。
VRゲームはオリジナルの作品で、体を使うフィットネスの動きで敵と戦い、ウェイトを使うことで攻撃力もアップするそうです。
トレーニングを続けていくと、レベルが上がったり新しくキャラクターが使えるようになったりするようで、飽きないような工夫がされています。
このようにゲーム性が高いので、従来のジムに通っている感覚ではなく、ゲームをするためにジムに行くというように目的意識が変わり、これまでジムに通うことが長続きしなかった方でも遊びに行く感覚になれば通うことも億劫にならず続くかもしれませんね。
まとめ:メタバースは医療の発展に貢献できる!
このように医療の分野でのメタバース内でのトレーニングが近い将来当たり前になる時代が訪れることになるでしょう。
メタバースはエンターテイメントに関してクローズアップされてきましたが、医療の分野でも使え、その他にも災害を想定した訓練などのトレーニングにも活用できます。
メタバースの認知度を高めるためにはエンターテイメント要素が必要不可欠ですが、医療が関わることによってエンターテイメントで認知してもらえなかった方にも知ってもらえます。
医療に関することからメタバースに触れた方が、実際に体験し利用度が増す可能性が高くなりそうですね。
苦痛で退屈だった治療やリハビリなどのトレーニングが、メタバースを通じてゲーム性のあるものに変われば、楽しく気軽に治療やリハビリを受けることができるかもしれません。
少しでもつらいものがラクになる世の中になればいいですね。
人体に関わることですので、実際に使えるようになるまで時間を要すると思いますが、確実に医療もテクノロジーも日々進化しています。
メタバースを通じて、医療やヘルスケアに関する新たな体験ができる日を楽しみにしたいと思います。