メタバースはまだまだ発展途上であり、実際に我々の生活に対してどのような広がりを見せるのか、わからないことばかりです。
しかし教育現場においては、メタバースが現実世界とデジタル空間とを融合させたVR(仮想現実)とAR(拡張現実)の相互運用ができる時代になるかもしれません。
大学の現場では一部、すでに今できる技術の範囲でVRとARの利用がスタートしています。
メタバースは果たして大学を変えるのか。
今回はVRとメタバースが大学をどうおもしろくするのか解説します。
海外の大学ではどうなってるの?
まず海外の大学がVRをどう使っているのか見ていきましょう。
マイアミの大学では、Meta(旧Facebook)の「Meta Quest2」を装着して、授業の一環でVRによるメタバース空間でのディスカッションが行われました。
VRのヘッドセットを装着しなければならないという手間はあるものの、没入感がありますので、別々の場所にいてもつながりを感じて学ぶことができる新しい方法の発見だと概ね好評です。
この授業はその後、学期内の全授業をVRで行うことにもチャレンジしました。
学生も教授も全員が自分でデザインしたアバターとなり、授業に参加したのです。
ほぼ毎週、異なる環境のメタバース空間で授業を行ったり、学生たちにメタバースでの教室をデザインするという課題が出されたりもしました。
ZOOMでの授業や会議は多くの場所で浸透しましたが、VRによる臨場感はZOOMのようなテレビ会議で学ぶよりもはるかに魅力的だと、学生も教授も手応えを感じています。
もちろん、このような刺激的な授業が行われているのは、まだほんの一部です。
しかしメタバースにより簡単にクラスの場所を変えられる自由度の高さは、現実世界でずっと同じ場所で授業を受けるよりもはるかに楽しいと思う学生は多いことでしょう。
大学側もVRによるメタバース授業の経験が、学生たちに多様な視点や考え方をもたらし、より深い理解や創造力、問題解決力、イノベーションにつながると考えています。
メタバース大学に通う可能性は?
メタバースで授業が受けられるということがわかり、技術がさらに進んでいけば、今のように大学に通うことなく、世界中どこからでも自分のアバターを使って好きな大学の授業に参加する、そんな時代が訪れるかもしれません。
メタバースの先駆けともいえる「セカンドライフ」がスタートしたのは、今から20年ほど前です。
セカンドライフが登場した2003年当時、アバターを作って仮想世界で生活することはとても斬新なアイデアでした。
セカンドライフの影響を受けて、いくつかの大学ではバーチャル授業とアバターを作る実験が行われましたが、そのときは必要な技術が足りてませんでした。
メタバースへの理解もほとんどなかったために大多数の抵抗勢力とぶつかり、さらにネットワーク技術が圧倒的に追いついていなかったこともあり、バーチャル授業計画は一旦は消えてしまいました。
それから20年、すべての条件が整いつつある現代で、再びメタバースによる大学での授業が進行しようとしています。
大学がまず始めようとしているのが、VRとARを組み合わせた没入型環境「メタバーシティ」です。
メタバーシティを使えば、大学が全世界で数十億人規模の学生を教えることが可能とされており、費用もかなり抑えることができます。
ヘッドセットに抵抗があるなど、まだ多くの課題はあるものの、大学の授業をメタバースで受けるようになる時代が近づいてきています。
学生はメタバースを受け入れられるか?
世界中でメタバースが盛り上がっていますが、学生は今の状況に違和感がないのでしょうか。
学生たちの日常には、今の40代以上が学生時代に体験していないツールがたくさんあります。
TikTokやInstagramを見るだけなく、発信することにも抵抗なくどんどんやっていますし、10代YouTuberの活躍も目立ちます。
TwitterやFacebookは頻繁に利用している人の年齢層が比較的高い傾向にありますが、知らない学生はいないことでしょう。
これらを見るために使うのもスペックが非常に高いスマートフォンです。
さらに若者に大人気のゲーム「フォートナイト」はメタバースと同様、自分でキャラ作りをし、ゲーム内でのチャットも自由にできます。
パソコンやタブレットが家にあるのも当たり前で、今の学生はまさに「デジタルネイティブ」であるといえます。
つまり、これからますます広がっていくであろうメタバーシティによるバーチャル授業体験、メタバース空間で授業を受けることに対してはほぼ抵抗なく受け入れられると思われ、メタバースは大学から発展していくかもしれません。
まとめ
実は日本の大学でもメタバース授業への取り組みがスタートしています!
中央大学では学生が講師から教わるだけでなく、学生同士がカリキュラムを設計し、VRの中で英語を教え合う、自走式VR英語学習モデルが立ち上がっています。
この取り組みは世界初のメタバース型言語学習EdTech企業のImmerse社と中央大学国際情報学部の斎藤教授の研究授業「iTL」が共同で実施しました。
この授業も学生たちが没入感のある環境で英語を教え、学ぶことが楽しいと好感触を得ています。
平均満足度も非常に高い評価が出ており、中央大学の取り組みは日本の他の大学にも広がっていく可能性があります。
このように、大学がメタバースを導入するというのは海外だけで起こっているわけではありません。
日本の大学にもメタバースの波が押し寄せているのです。
大学の授業も会社の会議も、3年ほど前までほぼすべて対面でしたが、この2年間で実際に会うことなく、ZOOMなどのテレビ会議を使うことにほぼ抵抗がなくなっています。
VRを使った大学でのメタバース授業も少しずつ浸透、という速度ではなく、ある時期に突然、急速に広がっていくかもしれません。
技術的な下地は揃ってきていますので、社会情勢など、あとはきっかけ次第という面もあります。
メタバース上ではだれもが同じ状況で授業を受けられますので、VRゴーグルの発達、大学でのメタバース展開がこれからもっと進むことが楽しみで仕方ありません。