テンセントのベテラン社員4人は、電子メールや電話番号がWeb2においてプラットフォームをまたいで利用される個人の絶対的なIDとなったように、ブロックチェーン上に構築されたIDプロトコルである.bitを、Web3における普遍的なIDシステムにしたいと考えました。
それはつまり、ユーザーが使用する特定のプラットフォームだけでユーザー情報をID管理するのではなく、.bitだけでプラットフォームをまたいで、ID情報を管理できるようにするということです。
その未来をより確実にするため、.bit設立から1年経った今、テンセントは追加で1300万ドルの予算を確保しました。
.bitを利用したIDは、その名の通りドメイン名で提供されます。
.bitのエイリアス(別名)をドメインとして設定し、.bitが現在サポートしている暗号資産、またはNFTウォレットのアドレスとリンクさせると、それらのウォレットからのすべてのデータと資産が.bitのデータコンテナの下に置かれ、あなたの.bitページに表示されるようになるのです。

例えば、あなたが誰かから暗号通貨を受け取る必要があるとしましょう。
35文字のウォレットアドレスを渡す代わりに、claire.bitのようなシンプルなものを渡すだけで通信を実現できるようになります。
Ethereum Name Service(ENS)は、おそらく今日のブロックチェーンのID管理システムにおける最大のサービスであり、Twitterの名前にも.ethを用いている人が多くなっています。
.bitはENSをライバル視していますが、.bitはENSのような単なるドメインサービスではなく、より包括的なアイデンティティ・ソリューション・プロバイダーだと自称しています。
ENSがイーサリアムとだけやり取りするのに対し、.bitは中立的でブロックチェーンの種類を問わないソリューションを提供することを目指しているのです。
設立から1年、現在.bitには11万以上のアカウント登録があり、約3万8千の暗号資産アドレスが紐付けられています。
IDプロトコルは現在、Polygon、Tron、Binance Smart Chain、Ethereumをサポートしており、今後、Bitcoin、Dogecoin、Polkadot、Solana(いずれも暗号資産の名称)などとの互換性を追加する予定です。
このプロトコルは、現時点で100近いウォレットやdApps(分散型アプリケーション)と統合されています。
ビジネスモデルはシンプルで、ドメイン名やその他の識別サービスを含むアカウントに対して年間サブスクリプション料を徴収する、というものです。
この戦略は投資家からも支持されています。
同社の次の野望は、分散型自律組織(DAO)に.bitの利用を促進することです。
DAOにおいて.bitの利用が実現すれば、DAOのメンバー全員が.bitのアカウントを取得し、そのIDを使って組織の意思決定に投票することができるようになります。
すでに約180カ国にユーザーがいますが、代表であるYeoh氏は、「政府の書類がないために銀行口座を持たない人が多いアフリカや南米で、より多くのユーザーに利用してもらいたい」と考えています。

そのような公的なIDを持たない人が、.bitのアカウントを取得し、政府を飛び出して様々なアプリを使い始めることができる未来を.bitは提供します。
「DAOに貢献した場合、その記録は.bitのプロファイルに反映されます。もはや証明書は必要ないのです。」
.ethと同様に、.bitはいくつかのプラットフォームでその存在感を増して来ています。
中国の技術者や、ベンチャーキャピタリスト、Web3愛好家が好むソーシャルネットワークJikeでは、実際に.bitにアカウントを登録していなくても、自分の名前に.bitを付けている人もいるそうです。
「彼らは.bitを一種の社会的名声として扱っているのでしょう。」とYeoh氏は話しています。